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自作ネットワークオーディオ [audio]

  昨今、オーディオの世界ではネットワークオーディオというものが流行しています。LAN上のNAS(Network Attached Storage)などに保存したハイレゾリューション・デジタル音源にアクセスして高音質で音楽を楽しむというものです。アストンマーチンのカーオーディオを手がけるスコットランドの音響機器メーカーLINNなどがさきがけとなり、国内外のメーカーも追従しましたが、未だ発展途上の感が否めず、価格もまだまだ高いのが現状です。正直言って、私自身欲しい機種がみつかりませんでした。欲しいものが売られていないのならば自分で作ってしまえという訳で、お遊びを兼ねてネットワークオーディオを自作してみました。
  実現したい機能は次の通りです。
 (1)NAS上の音源を現在使っているDAC(Digital to Analog Converter)で再生したい
 (2)小型アンプを内蔵し、PCや携帯型プレーヤの気軽な再生にも使いたい
この2通りの使い方を併用するのは全く一般的ではありませんから、市販品がないのも当然です。このわがままな要求を満たすために、今回製作した機器は電源ブロック、USBオーディオインターフェースブロック、S/PDIF(Sony/Philips Digital Interface)ブロック、小型パワーアンプブロックからなっており、下記のような入出力を備えています。
【入力】
USBオーディオ入力
デジタル入力(S/PDIF : 光1系統 同軸1系統)
外部ライン入力
携帯プレーヤ用入力
【出力】
スピーカ出力(約2W+2W)
デジタル出力(S/PDIF : 光1系統 同軸1系統)
アナログライン出力
使い方は、上記(1)の場合、ネットワークに接続したPCと本機をUSBケーブルで接続し、本機と外部DAC間をS/PDIFの光ケーブルか同軸ケーブルで接続します。その状態でPCからNASの音源にアクセスして、そのデータを本機でS/PDIFフォーマットに変換して外部DACへ出力します。(2)の場合はPCをUSBケーブルで本機に、または携帯型音楽プレーヤをステレオミニプラグ付きケーブルで本機に接続して再生します。スピーカは本機の小型アンプで駆動します。
  USBオーディオインターフェースとS/PDIFインターフェースはデジットのキットを使用しました(共立エレショップで購入)。テキサス・インスツルメンツ社のPCM2906というオーディオ・コーデックLSIを核に構成され、サンプリング周波数48kHz、分解能16ビットまで対応しています。小型アンプと電源はZnO's Technical LaboratoryさんのLM380を使った「非革命アンプ」を参考にさせていただきました。アンプを製作するのは初めてだったので、自分自身が日頃疑問に思っていたことを何点かブレッドボード上で確認しました。その結果、常識ではありますが次の2点が非常に重要であることを再認識できました。1つ目は、音質の要は電源にあること、2つ目はアンプに使用する部品は汎用部品よりもオーディオ用部品の方が明らかに音質が良いことです。電源部とアンプ部について下記に補足します。
【電源部】
  今回の電源部はトロイダルコアトランス(Nuvotem Talema社製15V25VA 型名70063)、整流ダイオード(Vishay社製 1000V3A UF5408-E3)、平滑コンデンサ(東信工業製 ハイグレード音響用Jovial UTSJ25V3300μF)、5V電源用ボルテージレギュレタ(ナショナルセミコンダクタ社製 LM1086)から構成されています。実験の結果、電源用の平滑コンデンサは音質に顕著に影響を及ぼすことが確認できました。容量が小さすぎると音の歪みが増し、低音も全然出ません。平滑コンデンサは電源からのパワーを溜めておくダムまたはバッファのような役割をしていますので、容量が小さいと瞬発力に欠けてそれが歪みとなって聞こえてしまうのです。トロイダルコアトランスでAC15Vに降圧された電源はダイオードブリッジを経て全波整流され、平滑コンデンサでリップルが取り除かれます。整流用ダイオードは容量的に余裕があり、ファーストリカバリータイプの物を使用しています。平滑コンデンサ(3300μF)を一つずつ増やしていって音質の差が判別できなくなる容量を調べると13200μF(3300μF×4個)となりました。また、汎用コンデンサから東信の音響用電解コンデンサJovialに変更したところ、高音が優しくなり、低音のボリューム感が増しました。
【アンプ部】
  アンプ部はZnOさんの「非革命アンプ」を参考にさせていただきました。ナショナルセミコンダクタ社製の定番オーディオドライバICのLM380に負帰還をかけて低音の周波数特性と高調波歪率を改善した素晴らしい回路です。まずは汎用部品を使って組み立てました。オシロスコープでおおよその周波数特性を見ると、20Hzから30kHzくらいまでは非常にフラットで、波形上は変な歪みも見られませんでした。しかしこれを試聴してみると、とても音楽鑑賞には使えないというのが第一印象でした。高音が歪んで聞こえ、例えばシンバルの音が耳を刺すようにうるさくて不快な音がしました。とても長時間聞いていられる音ではありません。そこで音質に一番影響を与えそうな出力段のカップリングコンデンサをニチコンのMUSEに変えてみました。すると刺さるような音が非常にまろやかになり、不快さがなくなりました。しかし、どうも平面的でメリハリのない音でした。次にその他のコンデンサを音響用として定評のあるドイツのWIMA社製メタライズド・ポリプロピレン・フィルムコンデンサに変更しました。すると高音の解像感と定位が向上して立体的で響きのある音になりました。今回は抵抗の検討はしていませんが、コンデンサ同様に音質が良くなる可能性はあるので、今後の課題としたいと思います。さすがに十万円台のHi-Fiアンプと比較するとその差は歴然ですが、数十円のICがここまでの音を奏でてくれるとは驚きでした。周波数特性はそれほど低音域に伸びていないはずなのですが、意外にも低音が豊かに鳴ってくれました。全体的にはミニコンポの音を凌駕しているように思えました。
  巷で良く言われている通り、コンデンサによる音質の違いが歴然と存在することを今回初めて体験することとなったわけですが、いったいその違いはどこから来るのでしょうか。コンデンサの特性を示す指標として、一般的に誘電正接(tanδ、タンデル)と等価直列抵抗(ESR)が用いられます。理想のコンデンサでは電流と電圧の位相が直交しているので電力は消費されませんが、実際には位相が完全に直交していないためにエネルギーの損失が起こります。この位相ずれを表すのが誘電正接で、この値が小さいほど理想コンデンサに近くなります。また、容量成分の他に、わずかながら直流抵抗成分を持ってしまうのも理想コンデンサとは異なる点で、これを表す値が等価直列抵抗になります。これも小さいほど理想に近くなります。今回の実験で、コンデンサを変えることによって主に高音部の歪みや定位が改善されたことから、音質改善の原因は高周波での位相特性、つまり誘電正接が大きく影響しているものと想像されます。汎用品と音響用の誘電正接をカタログで確認しましたが、120Hzで測定したデータしかなく、そのような低周波数域では大きな差はありませんでした。10kHz以上でのデータが見たいところです。その他の原因としては、寄与率は低そうですが振動特性の違いも考えられます。電解コンデンサは陽極酸化させたアルミ箔、電解液を含んだセパレータ、陰極用アルミ箔の3種類のテープを重ねてロール状に巻いた構造をしています。従って、音圧や振動で隣り合うテープの距離が変動すればその影響は静電容量の変化となって表れるでしょう。フィルムコンデンサでも然りです。箔の形状、硬さ、サポート方法などで音質が変わる可能性は充分にあると考えられるのです。また、ニチコンの特許を調べてみると、セパレータにガラスの粉を付着させると音質が良くなるという記述も見られました。さらにエルナーのSILMICというコンデンサではセパレータにシルク繊維を混ぜて音質を改善しています。各社色々なノウハウがあるようです。
  今回作ったネットワークオーディオ機器もどきは目論見どおり正常に動作しました。電気回路部分は特に苦労もなく検討も含めて数日で完成しました。Windows XPとの相性も問題はないようで、USBオーディオ機器として正常に認識されました。S/PDIFによる外部DACとのデジタル接続もできています。一方、アルミケースの機械加工には思いの他時間がかかってしまい、1日で終わると見込んでいたところ、数日を費やしてしまいました。外から見える部分なので、基板にマウントされた端子類に対するパネル穴の位置合わせや、加工部のバリ取りや成形などを慎重に行った結果です。穴位置の精度を保つためには、正確なけがき線入れとセンターポンチ打ちが重要でした。また、1mmの下穴からドリルを交換しながら徐々に穴径を広げて行くこともポイントでした。しかし手持ち型の電動ドリルでは加工精度に限度があり、ボール盤が欲しくなりました。システムの性能に関しては、今後Foobar2000などのプレーヤーソフトをASIO(Audio Stream Input Output)ドライバで駆動して、本来の目的であるネットワークオーディオの音質を評価して行きたいと考えています。また、ブロックごとに交換が容易な構造になっているので、アンプ部をもう少し高級なものに載せかえてグレードアップするのも良いかなと思っています。構想から完成まで、この数週間は非常にワクワクした時間を過ごすことができました。 もの作りは楽しいですね。

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今回重要視した電源ブロック。トロイダルコアトランスとハイグレード音響用コンデンサを使用。

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電源用平滑コンデンサには東信工業のJovialシリーズを使用した

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デジットのUSBオーディオインターフェースとS/PDIFインターフェース

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アンプブロック。赤色のコンデンサがWIMA社製メタライズド・ポリプロピレン・フィルムコンデンサ。

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同じメーカーでも標準品(青色)とオーディオ用(緑色)では全く音質が異なる

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穴あけ精度は正確なけがき線とセンターポンチが鍵となる

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穴あけが終わったリアパネル

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アルミケースに組み付けて完成。ケーブルの引き回しは更に検討の余地あり。

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フロントパネル

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リアパネル

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コメント 6

さる1号

欲しいものが売っていなければ自作すればいい・・・まさに自分の甘味と一緒の感覚です(笑)
audio ampは部品で音が変わると聞いていましたが劇的に変わるのですね。
抵抗でも音が変わると聞きますが、興味深いです。
コンデンサなら周波数特性が云々と思いますが抵抗に周波数特性ってどうなんでしょう。

by さる1号 (2011-10-12 09:25) 

ZZA700

さる1号さん
なるほど、スイーツもこだわりを持つと自作に辿り着くのですね。(爆)
抵抗でも確かに音は変わるらしいですよ。
無酸素銅のリードが良いとか、いや鉄が良いとか、
巻線だ、金属皮膜だと、好みも様々なようで。
おそらくインダクタンスが影響するのではないでしょうか。
by ZZA700 (2011-10-12 20:40) 

メタボ暦4年

このジャンル、まったくもって疎いんですが
なんだか男ゴコロをくすぐります(笑)
by メタボ暦4年 (2011-10-13 12:38) 

ZZA700

メタボ暦4年さん
くすぐられちゃいましたか。(笑)
そう言えば、RCとも通じる部分がありますよね。
私もかなりくすぐられたかも(^^;)
男の子は単純な生き物のようですね。(自爆)
by ZZA700 (2011-10-13 23:39) 

COLE

昔オーディオに凝ったことがありまして、アンプも自作してみました
昨今はすっかり様子が変わりましたね
by COLE (2011-10-16 11:28) 

ZZA700

COLEさん
そうでしたか。アンプを自作されたことがおありなのですね。
スピーカもそうですが、アンプにおいても使う部品と設計思想で
全く異なる音になってしまいますよね。
いくらデジタル全盛とは言っても、音の入り口も出口もアナログですので、
味付け次第でどうにでもなってしまうところが趣味としては面白い部分かなと思います。
by ZZA700 (2011-10-16 13:34)